人口比と極端に不均衡で男性ばかりの議会は「不自然」 名古屋大学・田村哲樹教授:東京新聞 TOKYO Web

 国会の議員構成は男性に偏っています。国会でのジェンダー不均衡が長らく指摘されていますが、人口の約半数が女性である社会の姿とは今も大きく隔たっています。なぜ、不均衡は解消されないのか。女性の参画が進まないことに、どのような弊害があるのか。名古屋大学の田村哲樹教授(政治学)に聞きました。(聞き手・坂田奈央)

 ―国会議員の女性比率は衆院が9.7%、参院が23.1%です。

 議会が男性ばかりで、人口比と比べて極端なアンバランスになっていること自体が不自然。それを不自然と思わない事も不自然で、そのこと自体が弊害なのだとも思います。物事を決める場に女性が少ないことで、女性が取り組みやすいと言われる政策課題が軽視されがち、と言えます。

 議席やメンバーが固定化することで、審議のあり方や発言の仕方など「こうするものだ」といった慣例が生まれ、見直されにくくなる可能性もあります。当たり前とされることでも時には根本から見直し、別の可能性を探るのが、本来の政治の場です。女性がニューカマーとなって、新たな発想や議論の仕方を持ち込んだり、慣例の見直しにつなげることも期待できます。

 ―なぜ女性議員は増えないのでしょうか。

人口比と極端に不均衡で男性ばかりの議会は「不自然」 名古屋大学・田村哲樹教授:東京新聞 TOKYO Web

名古屋大・田村哲樹教授

 政治レベルと社会レベルの理由があります。政治レベルでは、まず与党が積極的に増やしていません。増やさなくても、支持率や選挙に響かないと判断しているからです。むしろ「家族」や「ジェンダー」に関わる問題に改革的な姿勢をとることは、与党の支持基盤、特に保守的な層の反発を招く可能性もあります。

 社会レベルでは、政治に限らず、女性のキャリア形成が難しい、ということです。他の職業で女性が指導的立場に少ないことと同じです。例えば、女性が仕事にかなり力を入れて取り組むには、家族の理解や支援が必要で、女性自身がそのことを気にせざるを得ないのに対し、男性はあまり気にせず済んでしまいます。

 ―候補者の一定比率を女性にする「クオータ制」は導入すべきですか。

 クオータ制には男女問わず違和感を感じる人がいて、「人為的に女性を増やすのはどうか」「げたを履かせるのはどうか」との声もあります。しかし、現在の国会議員の男女比率の方がよほど不自然、という視点がないことが問題です。

 ―国会に多様な意見を反映させるには、どうしたらよいでしょうか。

 選挙に関しては、比例代表制をベースにした選挙制度のほうがより多様性を反映しやすいです。小選挙区制は、選挙の次元で2つの選択肢に集約するものだからです。抽選制による会議を新たに設け、議会の極端な男女間の不均衡を補完的に是正する手もあります。

 身近なところでは、社会生活のさまざまな場で、女性が意思決定者になる場面を増やしていくことです。地域やPTAで女性が活躍していても、その長は男性であるとか、学級やさまざまなサークル・集団の代表が男性であるとか、まだまだの部分もあります。女性が代表になったり、自分の意志で決めたり、という場面が増えれば、女性議員が増えるための伏線や環境につながると思います。