身長1メートル92センチ、体重211キロの幕内最重量、逸ノ城が名古屋場所で、ひときわ存在感を見せている。先場所は場所前に新型コロナウイルスの感染が確認されて休場を余儀なくされた。休場中の心境について、こう語った。
逸ノ城
テレビで相撲を見て、俺も頑張らないとなと考えた。しっかり次の場所に向けてやろうと。
その言葉通り、今場所はみずからの持ち味を存分に発揮した相撲が続いている。初日から関脇、小結を相手に重い体を生かした前に出る相撲で白星を重ねた。4日目の貴景勝戦では左上手でまわしを取ると、ここでも一気に前に出て大関を圧倒した。
そして5日目、結びの一番。ただ1人の勝ちっぱなしとなった逸ノ城が土俵に上がった。横綱・照ノ富士には、対戦成績で2勝13敗と大きく負け越している。
立ち合い、すぐに左の前まわしを取った逸ノ城。ふだんならば、先にその攻めを許していたかもしれない。
逸ノ城
いつも横綱は左の前まわしが早い。それと同じように自分も左前まわしを引きたかった。そこだと思っていた。
取組後、きょうの狙いを明かした。この後、もろ差しになったが横綱に両腕をきめられ、一時、苦しい体勢となった。
逸ノ城は、それでもあわてなかった。右の下手でまわしの深い位置を取り、もろ差しのまま前に出続けた。横綱に反撃の隙を与えず、土俵の外に追いやった。
照ノ富士からの勝利は平成28年の初場所以来、実に6年半ぶり。これが通算9個目の金星となったが「始まったばかりなので、自分の相撲に集中するだけ」と浮ついたところはなかった。
取組を見た八角理事長は「このまま行きそうな気がする。どっしりとしている。優勝候補に名乗りを上げたという感じかな」と評価した。
名古屋場所の会場には七夕にちなんだイベントとして力士たちが願い事を書いた短冊が飾られている。
逸ノ城の短冊は「かちこしすること」。勝ち越しにとどまらず、優勝争いを引っ張る存在として中盤戦以降も目が離せない。