令和4年3月24日
このたび,科学技術の理解増進施策の一環として,学習資料「一家に1枚 ガラス ~人類と歩んできた万能材料~」及び科学技術週間告知ポスターを作成し,ウェブサイトへの掲載を開始します。
科学技術に関し,広く一般国民の関心と理解を深め,我が国の科学技術の振興を図ることを目的に,令和4年4月18日(月曜日)~24日(日曜日)に第63回科学技術週間が実施されます。全国の大学や研究機関,科学館等で,オンラインも活用した研究施設公開やトークイベントなど,多くの関連イベントが開催される予定です。
文部科学省では,この科学技術週間にあわせ,平成17年より,国民に科学技術に触れる機会を増やし,基礎的・普遍的な科学知識の普及を目的とした学習資料「一家に1枚」を作成しています。
この度,第18弾となる,令和4度版の学習資料「一家に1枚 ガラス ~人類と歩んできた万能材料~」(企画・監修:公益社団法人日本セラミックス協会,国際ガラス年日本実行委員会)及び第63回科学技術週間告知ポスターのダウンロード用画像を,文部科学省の科学技術週間のページ(https:/www.mext.go.jp/stw/)に公開しました。
今回の学習資料「一家に1枚」では,私たち人類を文化・芸術・生活・医療・科学・技術の全ての分野で支えている材料である「ガラス」をテーマに,人類の進化や科学の発展の歴史との関わりから最先端の科学技術への貢献まで,幅広い分野での活用事例を紹介しています【解説参照】。また紙面の内容をより掘り下げた特設ウェブサイト(※1)も開設します。
今後は,全国の小・中・高等学校,大学等に配布するとともに,配布に御協力いただける全国の科学館,博物館等を通じて科学技術週間中に広く配布を行う予定(※2)です。
(※1)特設ウェブサイト(https://glass-poster.iyog2022.jp/ )は令和4年度科学技術週間(令和4年4月18日(月曜日)~24日(日曜日))にあわせ,順次公開予定です。
(※2)各科学館,博物館等での配布については,科学技術週間の始まる令和4年4月18日(月曜日)以降,順次配布される予定です。学習資料「一家に1枚 ガラス ~人類と歩んできた万能材料」の配布に御協力いただく全国の科学館・博物館等及び科学技術週間協力機関の一覧は文部科学省の科学技術週間のページ(https:/www.mext.go.jp/stw/)にて公開しておりますのでご覧ください。
<担当>科学技術・学術政策局人材政策課
課長補佐 川端(内線3884)
科学技術社会連携係 太田桐(内線4029)
電話:03-5253-4111(代表)
03-6734-4190(直通)
【経緯】
国立研究開発法人,大学共同利用機関法人等から御提案いただいた学習資料「一家に1枚」に係る企画について「一家に1枚」企画選考委員会における審議結果を踏まえて検討し,令和4年度「一家に1枚」は公益社団法人日本セラミックス協会,国際ガラス年日本実行委員会に企画いただいたテーマに決定いたしました。
「一家に1枚」企画選考委員会 構成員
(五十音順・敬称略)
大草 芳江NPO法人natural science 理事
大塩 立華国立大学法人電気通信大学 男女共同参画・ダイバーシティ戦略推進室 特任准教授
小川 達也独立行政法人国立科学博物館 広報・運営戦略課 計画・評価担当 主任
八田 弘恵学校法人渋谷教育学園 幕張中学校・高等学校 非常勤講師
三ツ橋 知沙国立研究開発法人科学技術振興機構 日本科学未来館 プラットフォーム運営室
武藤 良弘前公益財団法人ソニー教育財団 理科教育推進室長
また,制作に当たっては,下記の方々及び各機関に御協力いただきました。
<企画・監修>
公益社団法人 日本セラミックス協会,国際ガラス年日本実行委員会
<企画協力>
田部勢津久(京都大学),石村和彦(産業技術総合研究所)
<製作協力>
「一家に1枚 ガラス」企画チーム
小野円佳(北海道大学・AGC(株)), 篠崎健二(産業技術総合研究所),上田純平(京都大学),岡亮平(名古屋工業大学),岸哲生(東京工業大学),栗村直(物質・材料研究機構),高橋儀宏(東北大学),長谷川智晴(福井工業高等専門学校),松下佳雅(日本電気硝子(株)),村田貴広(熊本大学),山崎芳樹(AGC(株)))
<図版・写真提供>
日本ガラスびん協会,硝子繊維協繊維協会,AGC(株),日本電気硝子(株),(株)ニコン,HOYA(株),(株)オハラ,キヤノン電子(株),TOTO(株),カガミクリスタル(株),(株)アフロ,Saxon Glass Technologies Inc.,D-Wave,浅草 飴細工 アメシン,(株)東京メガネ,日本カメラ博物館,尚古集成館,東芝未来科学館,メトロポリタン美術館,産業技術総合研究所,自然科学研究機構 国立天文台,宇宙航空研究開発機構,東京大学宇宙線研究所,大阪大学レーザー科学研究所,東北大学金属材料研究所,小久保正(京都大学),山室隆夫(京都大学),細野秀雄(東京工業大学),梶原浩一(東京都立大学),宇田川将文(学習院大学),平野琢也(学習院大学)
<編集・デザイン>
トッパン・フォームズ株式会社
【解説】「ガラス ~人類と歩んできた万能材料~」
ガラスは,太古の昔から現代まで,わたしたちとともに進歩しながら,文化・芸術・生活・医療・科学・技術の分野の発展を支えてきました。2022年は国連の国際ガラス年です。この記念すべき年に,この学習資料「一家に1枚」を通じて,ガラスの存在と重要性を多くの人々と共有できるように,本資料を作成いたしました。
人々は石器時代に天然のガラスである黒曜石を矢じりとして利用しました。文明の起こりとほぼ同時期に,ガラスの製造がはじまりました。まず作られたのは窓ガラスやビン,食器などの容器でしたが,レンズの発明を皮切りに,顕微鏡や望遠鏡がつくられ,人々の「みえる」世界が大きく広がりました。現在もガラスは,重力波やニュートリノの観察に貢献しています。現在のコロナ禍においても,ガラス光ファイバーによる高速インターネット網が世界をつなげていますし,ワクチンを保管するバイアル瓶や,高速医療診断を行うガラスマイクロ流路が活躍しています。「世界を作った六つの革命の物語」Steven Johnson著にあるように,「ガラスは人類が手にした最大の革命の1つである」と言えるでしょう。
この学習資料は3つの要素から構成されています。
① ガラスとは何かを説明する部分
原子が不規則な状態で固まったものがガラスです。結晶とは異なるこのガラス状態に対して子供たちが興味や疑問を感じる機会となるように,そのつくりかたや,食品や生物でもガラス状態になるものがある,といった例を示しました。このように,「そもそもガラスとは何か」を考える部分を資料の周囲に配置しました。
② 人類とガラスの発展の歴史を示す部分
資料の中央から右上全体にかけては,「文化・芸術」,「生活・医療」,「科学・技術」の3つの側面に大きく分けて,それぞれの面で人類を支えたガラス製品の画像を掲載しました。左下の原点を過去,そこから遠くに向かうにつれて時間が経過し,未来へと続くように画像を配置しました。画像に示されたガラス製品の時間を追った変化を見ることで,ガラスがいかに人々のくらしを豊かにしてきたか,またガラス自体がどのように進歩してきたかを視覚的に示しました。数多くある製品の中には,どの部分にガラスが使われているのか,どうしてガラスが使われるのか,すぐには分からないものもあるかもしれません。ぜひ考えてみてください。
③ 暮らしを支えるガラスとSDGs
資料の中央上部分の「身の回りにあるガラス」に,地球を中心として,広く生活に利用されるガラス製品を並べました。これほどガラスが広く利用される要因の一つは,地球とガラスの関わりの深さにあります。地球表面(地殻)における元素の重量比率は,窓ガラスの重量比率に極めてよく似ています。このため資源が豊富で偏在による紛争のない,社会的な持続性の高い素材と考えることができます。これを象徴的に表すために,資料の原点にあたる左下に地球を配置し,その表面からとけて流れ出る融液が広がり,固まって,人類と発展するガラスになっていく,といった様を表現しました。ガラスはリユース・リサイクルができる材料でもあります。ガラス製品が持続可能で豊かな社会に具体的にどう貢献しているかを示すために,関係するSDGs(国連の持続可能な開発目標)のアイコンを各所に配置しました。
また今回の学習資料「一家に1枚」には特設ウェブサイトも用意しています。このサイトでは,資料に載っている画像の説明と,それぞれの製品のどの部分にガラスが使われ,なぜガラスが使われるのか,といった詳しい解説を用意しています。本資料の楽しみ方を解説する動画や,ガラスを溶かしてつくるところの動画もこのサイトから見ることができます。資料のQRコードからアクセスできますので,ぜひ特設ウェブサイトもご覧ください。
日本の材料研究は,依然として世界的に主導的な地位を築いており,これからも社会を支えていく基幹となります。今後もガラスを含む材料への関心が育ち,この発展が続くようにと,ガラスに関わる産官学研究者11名が精力的に携わり,この「ガラス ~人類と歩んできた万能材料~」を制作いたしました。ガラスは産業・科学から芸術・文化の分野に至るまで多岐に渡って利用され,未就学児童から,小中高校生,大学生,一般の方々まで,全ての人が,日々接し,その恩恵を受けている革命的な材料です。今回発行した「一家に1枚」が,子供たちの科学への関心の大きな明るい「窓」となればと心から願っております。
制作に当たり,快く画像や解説を提供していただいた皆様をはじめ,御協力いただいたすべての皆様に改めてお礼申し上げます。
「一家に1枚 ガラス」 企画チーム一同